先日は福岡市西区、糸島市、宗像市から
ロックやジャズのレコードの持ち込み買取がありました。
昨日の夜中寝れなくて、
静かな曲を聴こうかと思って、
いつものビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」を聴く気でいたら、
「そういえばブライアン・ウィルソン新作出してたな。
ピアノ・ソロだったな」と思い、
サブスクで聴くことに。
まず彼はベース奏者だった。
そして「ペット・サウンズ」はベースが凄く奇妙に聴こえるアルバムだった。
そのベースのようなリズムを奏でる左手(?)のピアノを聴くと、
彼はやはりロックの人であり、そのバックボーンである黒人音楽を感じる。
で、メロディを奏でる右手のタッチのタイム感は、
これも完全にロックやブラック・ミュージックの「間」で、
聴く者の集中力が途切れさせない。
一聴するとイージー・リスニングに聴こえるかもしれないが、
凄く奥が深い。
奥が深いと言えば「エコーの神」フィル・スペクターである。
ブライアンはフィルが死んだ後にこのアルバムを作ったのかどうかは知らないが、
このピアノの後ろになぜか「音の壁」を感じるのは、
もしかするとブライアンはフィルを思いながら作ったのではないかと。
彼はスペクター・セッションでピアノをクビになった経験がある。
だからピアノの後ろにハル・ブレインやキャロル・ケイ達がいて、
ピアノを弾いているように聴こえる。
スペクターへの鎮魂歌のようだ。
そのように聴くと、ブライアンの曲は、
奇しくもフィルを追いかけるように亡くなった
ロニー・スペクターに合わせて作っていたかのように、
ロニーの声にぴったりなのだ。
ロニーの声を想像しながら聴いてほしい。
まるでロニーの死まで予言したかのように
スペクター・ファミリーの狂気の音の影を感じるこのアルバムは、
「ペット・サウンズ」や「スマイル」と同じ匂いがする。
私には「プロデュースbyフィル・スペクター」の文字が見えた。
自宅で(「イン・マイ・ルーム」ですね)アップライトピアノを弾いてる感じが、
モノラルに拘ったフィルの趣向に沿っている。
ブライアンがたった一人で大海の前に立っている姿が浮かびあがる。
マイクもアルも果ては兄弟さえもいらない。
ジョン・レノンが「ジョンの魂」でビートルズもいらないと歌ったように
「ブライアンの魂」がここにある。
奇しくも「ジョンの魂」もフィルがプロデューサーである。
79歳でも狂気の天才は才能を発揮できる。
私の好きな漫画「バキ道」の作者、板垣恵介先生が、
今週の少年チャンピオンの編集後記で
「『四十にして惑わず』と言うが嘘だ。60代になっても迷い闘い続けている」
のようなことを書いていたが、
来年80を迎えようとも音楽と真摯に向かいあうブライアンの音は鬼気迫る。
歳を取ることの魅力は、枯れ果てた姿を見せる渋味だけではない。